ミディアムクラス ワゴンのこの車を選んだ理由・W123・280TE・愛車とのストーリー・S123に関するカスタム事例
2026年02月10日 20時44分
今から三十年ほど前のことだ。
赤いミニクーパーを転がしていた一人の青年が、懇意にしていた車屋の店主から、
「特別に見せてやるよ」と耳打ちされた。
案内されたのは、街外れにひっそりと佇む倉庫。
重いシャッターが上がると、そこには車だけでなくバイクも合わせて数十台。
どれも“旧車”と呼ばれる年代物ばかりが、静かに眠っていた。
油の匂いと鉄の気配が混じり合うその空間で、青年の視線を奪った一台があった。
アイボリーのボディに、深いダークブルーのルーフ。
旧いメルセデスのクーペが、まるで時間の狭間から現れたように佇んでいた。
「……あれは売り物ですか?」
思わず漏れた問いに、店主は少し困ったように笑った。
「気に入って買ったんだがね。売るつもりはあまり無いんだよ。倉庫に置いておくのも何だから、福島の博物館に持ち込む予定でね」
青年は即座に言っていた。
「私、買います」
店主は目を丸くした。
「えっ、そうなのかい。じゃあ見積もりを……ほら、この金額だ」
「そうですかぁ……ふむふむ……少し考えさせて下さい」
口ではそう言いながら、心はもう決まっていた。
惚れた弱みとは恐ろしいもので、結局ほぼフルローンで購入に踏み切った。
その短い期間で、あの車が1971年製の
W111 メルセデス・ベンツ 280SE 3.5 クーペであることを知る。
レアな車両だという認識すら曖昧な若造と、初めての旧車生活がこうして始まった。
多感な時期というのは本当に恐ろしい。
知識も財力も無い若造の心に、旧いメルセデスの造り込みの凄さが深く刻まれていった。
いや、旧いからこそ、あの時代だからこそ、手間と情熱が惜しみなく注ぎ込まれていたのかもしれない。
1970年代の車なのに、今の車と遜色がない。
交通の流れに遅れるどころか、高速ではむしろリードできる。
法定速度内では余裕そのもの。
「凄いな、メルセデス。これはずっと乗っていられる」
そう思いながら十年が過ぎた。
だが、人生には避けられない“家庭の事情”というやつがある。
泣く泣く手放したあの日の胸の痛みは、今でも忘れない。
その後はS124を気に入り乗っていたが、
三台が絡む玉突き事故の被害に遭い、これもまた手放すことに。
子育ても落ち着き、ふと気づけば、
あの頃刷り込まれた60〜80年代メルセデスの魅力が、静かに、しかし確実に心を揺さぶっていた。
そして辿り着いたのが、S123。
あの倉庫で始まった物語の続きが、
ようやく再び動き出したのだ。
まぁ、良いように理由をつければ、こんな感じです😊
