M6 クーペのbmw・6series・怪談話に関するカスタム事例
2026年08月02日 19時46分
鎌倉ってお化けが出やすい土地柄だって皆さんご存じでしょうか。
つい先日、鎌倉に住んでいる友人から久しぶりにLINEがありました。
“久しぶりに彼に会った”と。
自分が昔、鎌倉で体験した話ですがたぶん信じてもらえないと思います。自分自身もいまだに信じていませんし。
ライダーだった頃の、ある夏の夜の話です。今でも思い出すと少し嫌な気持ちになります。
その日は夜遅くまで鎌倉の友人宅にいました。
時間は確か午前0時を少し回ったくらい。
そろそろ帰ろうと思ったんですが昼間に歩いた道がなんとなく違和感があったのでもう一度見てみたくなって山側の道をバイクでゆっくり走ってたんです。
鎌倉って夜になるとマジで暗くなります。
少し山に入るだけで街灯がほとんどなくなる。
昼間は観光客で賑わっている場所なのに夜になると人の気配が完全になくなるんです。
バイクでゆっくり走りながら「ここ、昔の人も歩いていたんだろうな」なんて考えていました。
鎌倉は源頼朝が幕府を開いてから800年以上の歴史があります。
ただずっと平和だったわけじゃありません。
1333年には新田義貞によって鎌倉が攻められ鎌倉幕府が滅亡しています。
山に囲まれた鎌倉には極楽寺坂や化粧坂、巨福呂坂などの切通しがあります。
当時は鎌倉に入るための重要な道です。
つまり、今自分が走っている場所も800年近く前には武士が行き交い戦いが起きていたかもしれない。
そんなことを考えながら走っていました。
その時です。
後ろから、
「ザッ……」
と音がしました。
砂利を踏むような音。
僕はエンジンをかけたまま立ち止まりました。
音も止まりました。
「……誰かいるのかな?」
そう思って振り返ろうとしたんですが、
なぜかその時だけは振り返らなかったんです。
今考えるとそれが良かったのかもしれません。
僕はそのままギヤを入れゆっくり走り出しました。
すると
ザッ ガチャッ……ザッ ガチャッ……
今度は二歩。
明らかに僕の後ろを誰かがついてくる。
僕も少し走る。なぜか逃げられないと感じた。
僕が止まる。
後ろも止まる。
さすがに怖くなって頭はそのまま目線だけサイドミラーを見た。何も見えない。
少しだけ後ろを確認しました。
……誰もいない。
でも、その瞬間。
耳元で、
「……おい」
と聞こえました。
声というより、息が漏れるような小さな声でした。
僕は完全に固まりました。
そして、なぜかその時、「絶対に振り返っちゃいけない」と思ったんです。
理由は分かりません。ただ、本能的にそう思いました。
そのままゆっくり走り続けました。
すると今度は、
ザッ……ザッ……ザッ……ガチャッ……ガチャッ……
足音と何かが当たる音が近づいてくる。僕も走る速度を上げる。後ろも速くなる。
そして、
「……待て」
今度は、はっきり聞こえました。
僕は走りました。
後ろを一度も見ませんでした。
山道を抜けて、ようやく街灯のある場所まで出た時、安心して振り返りました。
誰もいません。
本当に誰もいない。
そこで、少し笑ってしまいました。
「なんだ、気のせいか」
そう思って走り出そうとした時です。
足元に、濡れた足跡が二つ並んでいることに気づきました。
その日は雨なんて降っていません。
しかも、その足跡。
僕の後ろから続いてきたものではありませんでした。
僕のすぐ横を誰かが一緒に走ってきたように僕の足跡と並んで続いていたんです。
そしてその足跡は僕が街灯の下まで来たところで突然、消えていました。
僕は怖くなってその場を離れました。
その後、家に帰ってから鎌倉の歴史を調べました。
そこで知ったんです。
1333年。
鎌倉幕府が滅亡した時、北条高時は東勝寺で一族とともに最期を迎えています。
鎌倉にはその時代の記憶が今でも残っています。
もしかするとあの足音は、800年前にこの道を歩いていた誰かだったのかもしれない。
そう考えるとあの日、僕の後ろを歩いていたものが何だったのか、
今でも分かりません。
だから僕は、夜の鎌倉に出歩く時は後ろから足音や甲冑が当たる音が聞こえても絶対に振り返らないようにしています。
……という話をするとだいたいみんな「それ、本当にあった話?」って聞いてくきます。なので正直に答えます。
源頼朝も北条高時も新田義貞も鎌倉幕府の滅亡も切通しも全部本当です。
そして僕が夜の鎌倉で足音や甲冑が当たる音を聞いたことも耳元で「おい」と言われたことも濡れた足跡を見つけたことも嘘のような話ですが本当に作り話です。
夏の夜の怪談話
お付き合い頂きありがとうございました。

