フェアレディZのShinさんが投稿したカスタム事例

5頭の獣達(読切)

ある土曜の夜…越中富山から越前福井に向けて三頭の獣が走った。奴らは人の姿に化け人間界でもう40年以上も住み続けて居る。一見すると獣達の容姿は温厚で優しい人の姿に見えるが、残酷な迄に女人に執着してる雄の獣だという事は同じ種族の獣なら直ぐに見破られる。

富山から福井…。
何故冬の訪れが近いこの時期に奴らが2時間近く掛けて迄福井に来たのか？既に自国富山では何百人もの女性が彼らの手に掛けられており、富山県の生娘は既に壊滅状態なのである。

勘の良い読者ならもうお判りだろう。福井で夜会が行われるとなれば、そこには沢山の人々が集う。人が集えば女人も集まる。この夜に集まる女人を獲物にする為、奴らは2時間の時を掛けて来たのだ。言うなれば彼らは性の精鋭部隊なのだ。

夜会の趣旨は『でんぐるま』=(自動車)の集会だと伝えてあったのだが、富山三人衆は勝手に『酒池肉林集会』だと決め込んでいたのであった。

虎之助『デイ吉！お前判っとるやろの？』

デイ吉『勿論判っとるよ！ええ子がおったら直ぐに虎之助様に伝えるが！』

虎之助『庄左衛門も判っとるの？』
庄左衛門『な〜ん、ワシは誰でもええっちゃ♫あんたの残りでいいがいね♫』

虎之助『おっしゃ、ほんならいっか♫』

でんぐるまの集会を勝手に御乱心集会だと思い込んでる三人衆。喜び勇んで会場に足を運ぶのであった。

『なんちゃこんなぎょうさんの車ばっか集まって！五月蝿くてしゃーないわ！』
会場に着くなり虎之助は徐に怪訝な顔になった。

『虎之助様、表向きはでんぐるまの集まりやから仕方ないっちゃ♫ほれよりおなご探さんと！』とデイ吉が言うと、『おいよ！はよ探さんと時間のうなるがぁ』と、庄之助も続いた。

『あ！こん車、みた事あるがいね！』
三人衆が会場散策してた時、デイ吉が叫んだ。と同時にデイ吉の背後から声が掛かった。

『お久し振り♫皆さん♫』

『ヒロ乃助平殿！』なんとこの時、加賀国からも『女人を捕獲するべく一頭の獣が来てたのであった。

『こんところでなんしとる？』虎之助は訝しげな表情でヒロ乃助平に声を掛けると、『でんぐるまを見に来た』との返答。虎之助はそれは嘘だと見破るも、ライバルの出現に苛立ちを隠せなかった。直ぐに内心はヒロ乃助平に伝わった。2人の間に見えないイナズマが轟いた。

『そう言えば、会場にモッセ太郎殿も来ておるよ！』ヒロ乃助平からそれを聞いたデイ吉は喜びを隠し切れずに思わず…『うっそぉ〜❣️』と歓喜の声を上げたのだった。

デイ吉とモッセ太郎。この2人は未だ数回しか顔を合わせた事は無いが、実は2人の間には既に愛が芽生えていたのだ。

デイ吉は瞬時にモッセ太郎を探し見つけ出した。『モッセ太郎様にお土産があるの💞これ貰ってください💞』そう言って土産を手渡すデイ吉。『うやぁ辱い💞』そう言って喜ぶモッセ太郎。

虎之助はその様子をみて、デイ吉は両刀遣いだと改めて感じたと同時に、モッセ太郎も両刀遣いなのだと知ったのだった。世の中は広いのだ♫

越前の国に集まった加賀と越中の5匹の獣達。会場で今宵の獲物をかれこれ2時間以上探し回ったが、残念ながら好みの女人は見つからず終い。

時計を気にしながらイライラ会場を彷徨いていると、今夜の夜会の主催者『帝人』が挨拶に現れた。

『今夜は遠路遥々、越前の国迄お越し頂き有難うございます🙏沢山弄ったでんぐるまが多く集まってるので、楽しんで行ってくださいね♫』そう言い残し帝人はくるりと踵を返した。

『なにが沢山弄ったでんぐるまや！ワシはそんなんに興味は無いんじゃ、。違うもん弄りたいんじゃ！』虎之助は帝人の後ろ姿に囁く様に呟いたのであった。虎之助はブルブルと震え、握り締めた拳からは血が滴り落ちた。

戌の刻から始まった宴も縁たけなわを迎え、そろそろ終焉の時。亥の刻を迎える事となった。

他国から集まった女人ハンター達は勿論収穫無し。打ちひしがれる様は哀愁漂う姿ではあるが、元々でんぐるまの集会なのだから女子が来ないのは当たり前なのである。

『又来て下さいね♪』
帝人が愛想良く微笑み別れの挨拶をした。

虎之助はその言葉で今夜はもうこれで終わりなのだと悟ると、誰にも悟られぬ様に頬にうっすらと悔し涙を浮かべた。

出逢いとは求めて掴むものにあらず。出逢いとは不意に人生に訪れるものなり。(武者小路伸)

さて♫今夜お送りした2025スーパースペシャル夜会(イン福井)如何でしたでしょうか。沢山のチューニングカーと旧車の祭典の話でした。素晴らしい車達の画像で溢れ返って見所沢山だったと思います👍今年の福井夜会はこれを持ちまして最後となります。来年も不定期で執り行いますので、参加希望の方は是非おいで下さいませ🙏