X6 Mの横顔選手権・ショート・オーバーハング・エンジン屋・バイエリッシュモトーレンウェルケ・ロングボンネットフードに関するカスタム事例
2025年10月27日 07時43分
横顔選手権?
バイエリッシュモトーレンウェルケ編
チョロっと長文でエンスーな話を。
サイドビューから。
バイエリッシュモトーレンウェルケ(バイエルン発動機)の意匠のひとつである「ショート・オーバーハング」
ショートオーバーハングとは前輪の中心点からフロントバンパーの先端までの距離の短さを言います。
BMWの場合は一部のモデルを除き、ハンドリング重視のため、Mモデルも通常モデルもこのフロントまでが短い寸法を採用しています。
ショートオーバーハングにロングホイールベースのスタンスを組み合わせることで、グランドツーリングでの長距離移動の直進安定性を高めるのだそうです。
ただしXモデル(X5/X6/X7)の場合は、四輪ともに太いタイヤを履くため、トラック等の車重の負荷がかかった轍状の路面を走るときは、大胆にステアリングを取られます。
グイっと持っていかれるイメージ。しっかりとステアリングホイールを操作しないと危ないです。極太タイヤによる接地面の大きさは路面をうまく捉まえてグリップ力を発揮してくれますが、逆に轍悪路では捉まりやすいという特徴があります。
日本のメーカーがむやみに太いタイヤを履かせないのはハンドリングと燃費を重視した結果でしょうか。
お題から逸脱しますが、「ロングボンネットフード」も独逸のエンジン屋BMWが、機関の造形美を意識した設計です。
シリンダーを縦長に配置するエンジンが圧倒的に多いのもBMWです。
既に廃盤ですが、BMWの自然吸気6気筒の「N52型」エンジン
BMWエンジンのアイコンだった直6は排気量の割に縦に長いエンジンです。
N52はBMW製のエンジンなのでBMWのエンブレムが付いています。
自然吸気の直6はノンターボゆえに大きくアクセルをオープンした時の加速力はおとなしいものの、4千回転から上の澱みなく吹け上がるサウンドと加速は唯一無二です。
BMWの「シルキーシックス」という呼称がありますが、このエンジンフィールはモーターのようにリニアに回り、妙な振動やザラ付きがないと言った感覚です。
S63型エンジン V8ツインターボ
TC(テクニカルアップデート)第二世代 F86
これはBMW傘下のグループ会社である M GmbH(M社) が、傑作エンジンと言われるS85:V10エンジンの後継モデルとして開発したパワーユニットです。
2009年に登場した初代X6M:E71から現行のG90:M5まで採用されており、今でも製造が続く大変息の長いエンジンでもあります。
モデルチェンジとLCIによるテクニカルアップデートとハイブリッド化により改良を今でも続けています。
F系世代以降のM5/M6/M8/X5M/X6MのMハイパフォーマンスモデルに採用
ショートオーバーハングのデザインによりフロントまでの距離が短いと複数の補器系の配置に苦労します。
特にこの63エンジンの場合は、10個のラジエーターユニットと5個のウォーターポンプを備えるため、様々な工夫がされています。
通常はファンベルトから前とシリンダーの上のスペースをうまく活用して補器系を配置しますが、このV8の高さがあるエンジンは前にも上にも制限があります。
そこでインタークーラーの冷却系をエンジン下部の位置で路面に向けてマウントさせる構造を採用しています。
前方ではなく路面に向けての配置は走行風が当たらないため、当然に熱交換が損なわれるわけですが、その対策としてエルボー形状の導風のファンネルを備えています。
インタークーラーの冷却水はエンジンが作動している最中はサブタンク(写真のエンジン真上の小さなボトル)から補器系に出入りします。サブタンク本体は夏季の猛暑日でも人の手で触れることが可能な温度です。
メーカーのエンジニアはおそらくインタークーラーへの冷却系へ積極的に走行風を当てなくても問題ない範囲で計算をしており、良く考えて作っています。
BMWが開発したハイパフォーマンスエンジンにN63型があります。
S63と同じV8の4.4Lですが、こちらは全くの別物です。
どちらも似たようなV8レイアウトにはなっていますが、M社は独自に「クロスバンクエキゾースト」を世界で初めて開発し、その特許を取得しています。
「クロスバンクエキゾースト」とは、ホットVと呼ばれる従来通りのVバンクの内側にエキゾーストマニホールドを配置しますが、左右バンクから出ているそれぞれのマニホールドを対面側のターボチャージャーに導く形です。
写真のように左バンクから出た黄色の燃焼ガスが通るマニホールドは右バンク側のターボチャージャーに接続しています。
若干の仕様変更に見えますが、マニホールドのエルボー形状をなくし、さらに集合させることで排気干渉を低減したものです。
N63の場合はこのVバンクの内側にマニホールドを置くものの、エルボー形状で左右で独立した経路でターボチャージャーに燃焼ガスを導きます。
S63を積んだクルマの仕様諸元には「Mツインパワー・ターボ」との記載があります。
これはビターボやターボチャージャーを2基を備えているという意味ではないようです。
ショートオーバーハングと相まって高低差のある車道と歩道の凸凹の通過では下部が接触しないように考えられています。
直6は滑らかなエンジンフィールですが、このV8は同様に滑らかであって、シートに押しつけられるトルクと高回転まで短い時間で吹け上がる特徴があります。
まんま航空機の離陸の時のアレです。
BMWは戦前からのエンジン屋出身なのでエンジンフィールには特に重きを置くメーカーです。
Mモデルは見た目は地味なファミリーカーでもあります。
しかし中身は非常に凝った作りです。
